2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

斎藤茂吉の歌1 ひぐらしは近くの森に鳴きはじむパリの森にも鳴かざるものを/『つきかげ』

先日、担当させていただいている小さな講座で「蟬」というお題を出したら、無観客のオリンピックの試合で蟬の声だけが歓声みたいに聞こえる、という歌が何人もの方から出されていて、おもしろいなと思った。 他の国ではまずないことな気がする。 アメリカで…

小島なおの歌1 八月に生まれしわれを差し置いて緑の夏は加速しており/『サリンジャーは死んでしまった』

「差し置いて」という言葉が強くて、歌集をぱらぱらめくっていて目に留まった。 この場合「差し置いて」はわたしの側の強さ(このわたしを差し置くとは!みたいな)ではなく、端的に加速してゆく緑の夏の強さなのだ。サ行音の鋭さも相まって、切り立つような…