小島なおの歌1 八月に生まれしわれを差し置いて緑の夏は加速しており/『サリンジャーは死んでしまった』

 「差し置いて」という言葉が強くて、歌集をぱらぱらめくっていて目に留まった。

この場合「差し置いて」はわたしの側の強さ(このわたしを差し置くとは!みたいな)ではなく、端的に加速してゆく緑の夏の強さなのだ。サ行音の鋭さも相まって、切り立つような季節の推移を感じさせる。

 

自分の生まれ月について、みんなそれぞれの思いがあるような気がするけど、

それにしても八月ほど強烈に自分を差し置く生まれ月はないかもしれないと思った。