夢1

茂吉の夢を見た。
こたつのようなところで食事をしている。
わたしの向かいに茂吉がいる。向かいといっても私の側には三人、両側にも二人ずつはいて、小さいこたつに八人がぎゅうぎゅうに座っている。
茂吉の左側に座っている少し年輩の女性がハムカツを食べていて、これおいしいです。
これと合わせて食べるとおいしいんです。と言って漬物のようなものをハムカツに載せて食べている。茂吉が興味を示したので、女の人はすぐに、先生食べますか。食べてみてください、と茂吉の空いた皿にそれを移す。
わたしは既に茂吉が一度、そのハムカツをよそってもらっていて、漬物とばらばらに食べてしまっていたのを目撃していた。もさもさと食べてしまっていた。
わたしも、その漬物と合わせてハムカツを食べたくなっていたけど、こういうときに、与えてもらえるのが茂吉なんだなと思いながら、茂吉の食べる様子を注視していた。
一度食べ終わった皿に取り分けられたハムカツが載っている図はあまりきれいではなく、茂吉はその皿の上でゆっくりとハムカツに漬物を載せ、箸で挟んで口に運ぶ。もそもそと茂吉の口に入っていくハムカツのころもが茂吉の髯に触っている。
わたしも食べたいなと思う。すると、女の人が急にこちらに食べますか?と言って、茂吉の皿から少し取り分けようとしてくれたものだから、わたしは手をぶんぶん振って、とんでもない!そんなんで、ほんとですか?なんて言ったあかつきには!!
と大袈裟に言って、その場の茂吉以外の全員で声を立てて笑ったところで目が覚めた。
自分の言った、「あかつきには」という言葉が耳に残った。
あれは晩年の茂吉だった。